前回の記事でお店の紹介を書かせていただきました。
その中で当店ではカウンターがあって量り売りをしていると書いたのですが、日本ではまだまだそういう店は多くありません。ほとんどのお店があらかじめ一つ一つ袋に入れてシールをして置いてあります。日本どころかイギリスも同じで今でこそ量り売りをするお店が少しずつ増えてきましたが基本はやはりあらかじめ袋に入れてシールをして棚に並べて置いておくというスタイルのお店がほとんどです。
では量り売りをするというお茶屋さんは新しいタイプのお店かというとそうではありません。むしろその逆で昔は量り売りしかなくオールドスタイルなお店なのです。日本もイギリスも基本的には棚に色々な種類のお茶が並んでいて店主がお客に合わせて量り売りをし必要ならばその場でブレンドまでするというお店がほとんどでした。ではなぜそういったお店は今では少なくなってしまっかというと、きっかけは戦争にあります。
日本では第2次世界大戦、そしてイギリスでは第1次世界大戦と第2次世界大戦がきっかけで量り売りをするというスタイルのお店はなくなり、お茶は全て個包装で販売するという形に変化いたしました。20世紀の初頭、第1次世界大戦が始まった時、イギリスでは紅茶がすでに国民飲料として広く親しまれていました。そんな中、当時のイギリス政府が懸念したのが紅茶の買い占めです。当然、戦争中は食べ物などの物資の供給が十分ではなくなります。一部の人間が紅茶を買い占めて全員に紅茶が行き渡らなくなり国民の士気が下がることを政府は恐れて、真っ先に紅茶の量り売りでの販売を禁止し全て個包装にし配給制にし全て国の管理下で分配することにしました。
第2次世界大戦の時も同様でイギリス軍や国民にとって紅茶が飲めなくなるということはあってはならない。ということで戦争に突入するとすぐに紅茶は配給制になります。第2次世界大戦中のイギリスはチャーチルが首相を務めていましたが「たとえ戦地で弾薬が切れても、決して紅茶は切らしてはならない」という命令を出したほどです。日本でも同様に第2次世界大戦中、すぐに茶は配給制になりその後嗜好品扱いとなり生産中止令が出てお茶の売り方というのは変わっていきました。
その後、生活必需品としてのお茶というものを販売している時は個包装で販売していたほうが合理的だったので長年そういった販売方法が続いていました。しかし近年、お茶というものが生活必需品からどんどん嗜好品としてのお茶という側面が強くなってきてまた販売方法が以前の量り売りというものに戻しているお茶屋さんが出てきています。たくさんの種類のお茶がありますがそれぞれ味や香りなど個性があり自分の好みのお茶を見つけるのはとても面白く、家にいる時間が長くなった今、ちょっと飲んでいるお茶を変えるというのは一番簡単に生活を豊かにさせる方法の一つだと思います。ぜひお近くにあるお茶屋さんでいいので一度、お茶屋さんでお茶を自分で選んで買ってみてください。